こだわり、軸。

カテゴリ:木工

先日、滋賀ナビの取材があった。

「こだわりはなんですか?」という記者の問いに彼は悩みながら、「フォルム。形です。」と答えていた。

「こだわりって何だろう。」

その夜の食卓で彼が私に問いかけてきた。

彼の形へのこだわりは、もちろん私もよく知っている。作りたい形と用の美のおしくらまんじゅうの末、ようやく生まれる一筋のラインを彼はいつも探し求めている。

でもそのわずかな角度、厚さでぐっと変わるものを決定する力の源は、一体どこから湧いてくるのだろう。

こだわり、軸。それは当たり前のように自分の中に堂々と居座っていて、いくら頭を振ってもこぼれ落ちなくて、でも、雲のように遠くてつかめないもの。

私は昔、自分を知りたくてものを作る道に入りたいと思った。そう、こだわり、軸を知りたくて。でも私の思うものを作るには素材と向き合うだけでなく、人間らしく精一杯日常を生きる事、教養を積む事がその土台になると信じてきた。多くの体験、言葉、その雑多の中から一滴の純度の高い水を抽出する作業、それが私にとってのこだわりのように思う。

そしてそれはまだまだ捕まえられない。

言葉にも出来ない。

でも本当は、捕まえたくないのだろう。生きる限り少しずつ変わり続けるものだから。

変わってゆくこだわりに身を委ねながら、今日も彼は、新作スツールの足のわずかな太さ調整が果たしてこれでいいのかと、自らの審美眼にかけている。