お味噌の出来上がり。

カテゴリ:暮らし

今年の2月に仕込んでおいた味噌を開封した。壷を開けるとまさに黄金色のふわふわのお味噌が顔を出した。

大豆と麹と塩と時間、素材はこれだけなのに、言葉にし難い美味しさの少し甘めの味噌、これは彼のお母さん直伝の味。

味噌をとぎ入れ、ふんわり立ちのぼるだしと味噌の香りを吸い込むと、あの2月のきりっとした空気や、段取りよく作業するお母さんの割烹着姿が浮かび、温かいおふくろの味に包まれてゆく。

手によく馴染んだ木のお椀によそい、葱を浮かべて食卓に出すと、彼がうまいうまい、と喜んで食べてくれるから私は毎日、色々な想いをのせて味噌汁をつくる。

幸田文さんの台所エッセイの中に、

「楽しさは料理をする手から立ちのぼるもの」

という一節がある。幸田さんは、殺風景な自身の台所に対しての哲学を述べておられるのだけど、まさにその通り。

食材たちのエピソードにいちいち耳を傾けていたら、こんな賑やかしい場所は他にないと思う。

私の愛すべき台所、伝えていきたい味処。

2014年9月22日 月