年の終わりに。

カテゴリ:染織

来年の足音がひたひたと聞こえてくる。 慌ただしい日々の中、気づけば今年もあと3日になっていた。

着物を織り終えた。 着物の名は、白秋。

この言葉のチカラを借りて、眼を開く。眼に映るものは透明で澄んでいて、その見えてるけれど見えないものを、着物に移しとりたい、と、一本一本の糸で永遠を織り込む想いで織った着物。

今年の秋は晩秋まで晴れの日が多く、何度朝焼け、特に夕焼けに魅了されたことだろう。 吸い込まれそうに澄んだ空と鏡面のようにうつる湖、ダイナミックに変わる朝陽、夕陽。 浜に駆け出て、深く空気を吸い込む内、 次第に自分の居場所も、存在もなくなり、魂だけになってどこか遠くに来たような気持ちになる。 到底言葉に出来ない程の感動。 そういったものを、この琵琶湖に空に、どれほどいただいたことだろう。

胸の熱くなるのを感じながら、機に向かう。 でも着物は、白を基調とした訪問着、というオーダーだったので、やりすぎないようほとばしる想いをグッとこらえ、着物を織り終えてから残りの経糸で、溢れそうだった自分の中の空と湖を織る。

感動を言葉に出来ないなら、せめてこの布に残せるだろうか、と、四苦八苦、時に無我夢中で織り、やっと織り終え、織り部屋から出て二階にあがり、窓から外を眺めると、 空が雲が湖が、また私を魅了し、どこかに連れて行く。 外はすっかり寒いのに、あの先の光はなんであんなに温かいのだろう。

自然に与えられ、私の心は生きている。 自分の織ったものも、誰かの心に少しでも触れれたら、どれだけ幸せだろう。 蚕の命と、草木の命、この空、湖、目にみえないもの。 それを身に纏うこと。 一本の着物に一体どんな力があるのだろう。 まだ、これから、学ぶことばかり。

と、つい、 着物のことばかり、かいてしまいました。 夫は、来年は仕事の傍ら、滋賀高島産のヒノキでカヌーカヤックづくり予定。 また来年も、楽しみたいものです。

2015.12.28