機織り準備
2015 / 06 / 11カテゴリ:染織
しとしと雨の続く梅雨。畑をはじめて、雨のありがたさがつくづく、心と身体にしみるようになった。紫陽花も花を大きく咲かせ、梔子は甘い匂いをふりまき、この恵みを喜んでいる。
そんな中、私は整経(せいけい)という、機織りの準備にとりかかっている。1100本の経糸を着尺の長さにし、1本1本綾をとることで糸を順序良く並べ、更にそれを反物の巾に広げていく作業。
ピンと張った絹糸の艶と緊張感。どの工程も息をのむほど美しく、私にはひとつひとつが神聖な儀式にすら感じる。静かな部屋に大束(おおくだ)から糸をひく音が響くのが、とても心地よい。
整経も機織りもリズムが大事で、こういう作業をしていると、手が人格を持ったように勝手に仕事をしてくれる。手というものは、仕事をすればするほど、色々なことを教えてくれる。最近仕事を休みがちの私には、手もはじめはなかなか寡黙ぶってたけど、、、。昔の人たちの手はよほどおしゃべりだったに違いない。
そう、機織りの歴史は古い。
神話に語りつがれているように、また、衣食住に表されているように、生きる中で必然的に生まれた手仕事。それを今、改良はされてても同じ原理のシンプルな道具で、昔から続くやり方で作業を進めていく。そこにはもう必然という言葉はないけれど、こうしてひとつひとつに思いを込め丁寧につくる仕事の先にうまれるものを、信じている。
この着物の嫁ぎ先はもう決まっていて、夫のおねぇさんの元へゆく。この着物の経糸は弟である夫の木工仕事から出たひのきのカンナくずで染めた、薄いグレー。
着物1反ごとに物語がある。
これから始まる物語に、しばらくはどっぷりの日々。