Soubou craft 10年目へ

カテゴリ:お知らせ木工

春の太陽光と家々の影が織りなす眩しいコントラストの中を、時折小さな濃い影が忙しないさまで走るようになった。
その方向に顔をあげると
ツバメだ
ツバメが渡ってきた

あらゆる留鳥がいて渡り鳥がやってくるここマキノ。ツバメは捕食の昆虫の関係で地面すれすれをも飛ぶことが稀にあり、軒下を営巣地として快く提供している家々が連なるここ海津西浜の通りでは、もうすぐ巣作り子育てに飛び回るツバメたちへの春の交通安全週間がなんとなくはじまる。

まだ夏ほどの鋭さはなく、ただ冬が完全に去った事を思わせる眩しい陽光
京都からここマキノへ移住した10年前もそんな景色だった。
京都から通いながら工場づくり家づくり、マキノに来るや否や出産子育て、目まぐるしかった。
そしてこの4月11日で、夫とはじめた家業の木工家具屋が10年の節目を迎えた。

といっても、
主に事務仕事をこなす私と、実際に木と向き合い続けて形として生み出し、必要としてくれる方の元に着地する、を積み重ねてきた夫山本とではこの10年を振り返った時に、度々生え変わる鳥の羽毛と堆積されてゆっくり形成されていく地層くらいの違いがあるように思うが。
 
マキノの小さな家具屋 ー
そう思って走ってきたが、先日、山本が納めた家具に対してご自身の生き様ともいえる思想を投影し、この先々関わっていきたい、と伝えてくださった方がいると山本からきいて驚いた。

お寺のきしむ床を歩く時、
様々な想いでお釈迦様に参拝する人々の足元を支えてきた、すれて黒びかりする床板のならびに深い慈悲と存在を感じてじっと耳を傾けていたいと思う。
職人として長く堅牢であれ、という想いを土台に、長い年月を経て建物や床板自体から人格が漂ってくるのを体験して知っている。

スケールは違えど小さな家具屋でも、日々使う家具、用途としての家具、それ以上の存在を持たせる仕事ができるとは改めて驚いたことだった。
もちろん、そういう仕事をしていきたいと10年前に2人で何度も話していた。
でも、毎日慌ただしく仕事と向き合う中で 、必要で大事な出来事だった。

10年。
信じて見守り、応援してきてくれた互いの両親親族をはじめ、独立当初に開業祝いだと仕事をくださった方々、あらゆるご縁で繋がりをくださった方々。
そして困難な時、真剣だったり他愛ない話しだったり、心を開放させてくれる友人たちに心からの感謝を。
これからも一歩一歩精進して参りますので、
どうぞ末長くよろしくお願い致します。

Soubou craft
山本家一同

2024.4.15 記

Top写真
高島市にこの春オープンするレストラン、シノープルハウスに納めたテーブル
店主ご自身の生き様、天から落ちる一滴の雨がいずれ大地に染み渡るようにと、グラデーションの間隔ひとつひとつに意味を持たせ、「水紋」という名前を与え、ご自身と店のコンセプトの象徴となった。