白き秋
2015 / 09 / 16カテゴリ:染織
朝、床から出た時、 ヒヤッと背中に触れられる気配に背筋を正す。
秋の到来を感じるようになってきた。
空は高く、日ごとに澄んでゆく。 秋もまた、美しい季節。
すっかり月日がたってしまった。 6月末、親しい人が急な事故で倒れ、しばらくつきっきりだったが、今、まさか、奇跡の回復をみせている。
その人が声が出ない時にノートに書いた、「生きるために、」という言葉は言霊となり、今も私の心に住み着いている。
「生きる」とは何か。
その中、少しづつ進めていた機仕事。何度か色糸を増やし、ようやくデザインも決まり、織りへとはいる。
この着物は夫のおねぇさんの元へゆくもの。
たて糸は弟である夫の木工仕事からうまれたヒノキのカンナくず、よこ糸は彼女のうまれた8月の花木、百日紅の色糸を中心に、想いの全てをひと織りひと織りに織りこんでゆく。
先日、おねぇさんが秋は白だと教えてくれた。
秋は白。いわれを知らなくても、何か魅力的なものを感じる「白き秋」。
白は誕生であると共に再生の意味を持ち、秋は神さまからの恵みをいただく、ありがたい実りの季節。 また、七十二候の「草露白し」は、「いとしろし」つまり、「いちじるし」。 これもまた「ありがたいもの」につながるという。
忙しい日々、世間の喧騒、 機織りの時だけは、再生の秋の白き光の中へ、この着物にいざなわれてゆきたい。
2015年9月16日 水